対人地雷廃絶運動15年(1999-2014)の概観
                       
対人地雷全面禁止条約(オタワ条約)は1997年12月3日に署名が始まり、1998年9月に署名国数が条約17条で定めた40ヵ国1 を超え、その6ヵ月後の初日の1999年3月1日に発効しました。同年5月の第1回締約国会議以来、ICBLは、それぞれの時点の各締約国の地雷事情をNGOの目で見てまとめた、『ランドマイン・モニター報告書(LMモニター報告書)』を15年間、毎年、発行してきました。同報告書によると、オタワ条約が対人地雷によって惹き起こされる苦痛を軽減するのに極めて有効であったことが証明されました。この条約に参加した国は、対人地雷の使用、保有、製造、移転を直ちに止めなければならず、また保有地雷も4年以内に廃棄しなければなりません。
 
この報告、「対人地雷廃絶運動15年(1999-2014)の概観」、は1999年5月にジンバブエのマプートで開催された第1回締約国で発表された『LMモニター報告書1999年版』に掲載された「主な注目点(Major Findings)」と、2014年前半の現状を比較したものです。これは、1999年版に続いて毎年発表された14の版の『LMモニター報告書』の「主な注目点」を参考にして、条約の普遍化、条約の実施、条約に従う為に残された作業に光を当てています。
 
1. 条約の普遍化(条約の前文)
1999年3月1日にオタワ条約が発効した時に71ヵ国がオタワ条約を批准していました。1997年12月3日にオタワ条約が署名の為に公開された際に122ヵ国が署名したので、その半数以上が1年3ヵ月以内に条約を批准したことになります。オタワ条約が発効するための条件である同条約第17条に定められた「署名国40ヵ国以上が批准すること」が、条約の署名開始後1年以内の1998年9月に達せられたということです。この記録は、他の条約に打ち破られていません。

(1) オタワ条約の締約国数は161ヵ国です(オマーンが2014年8月20日に加入したので、その6ヵ月後の2015年2月の締約国数は162ヵ国)。そのうち、132ヵ国が署名、批准し、27ヵ国が加入、2ヵ国が権利の継承(succession)の手続きでオタワ条約に参加しました。
(2) ポーランドが2012年12月に批准したので、未批准の署名国はマーシャル諸島1ヵ国となりました。
(3) ここ数年で締約国になった5ヵ国は南スーダン(2011年7月加入)、ツバル(2011年9月加入)、フィンランド(2012年1月加入)、ソマリア(2012年4月加入)、ポーランド(2012年12月批准)です(オマーンが2014年8月に加入、その6ヵ月後の2015年2月に162番目の締約国となります)。
1999年3月1日にオタワ条約が発効した時に条約に入っていなかった中国、ロシア、米国を含む60ヵ国の内、25ヵ国がその後オタワ条約に参加しました。これら25ヵ国の中に大量の保有地雷を持つ国、対人地雷による汚染が著しい国であったアフガニスタン、ベラルーシ、コンゴ民主共和国(DRC)、エリトリア、フィンランド、イラク、クウェート、セルビア、ソマリア、タジキスタン、トルコ、ウクライナがあります。
 
(4) 非締約国の36ヵ国のほとんど総ての国々もオタワ条約の主な条項に留意し、地雷の禁止を概ね了承していると言っています。
(5) 11の非締約国、キューバ、エジプト、インド、イラン、イスラエル、ミャンマー、パキスタン、ロシア、韓国、シリア、米国は、1997年以来の毎年国連総会が実施するオタワ条約の普遍化と全面実施を呼びかけるための決議を棄権し、オタワ条約に参加するつもりのないことを表明しています。

2. 対人地雷の使用(条約第1条)
条約の最も大きな成功は、どこかの国が対人地雷を使用すると、世界が非難するようになったことです。『LMモニター報告書1999年版』は、1998年/99年に15ヵ国4 が対人地雷を使用したと確認したか、あるいは、その疑いがあると非難しました。
 
(1) 1999年から2013年まで継続的に対人地雷を使用したのはミャンマー(ビルマ)一国のみです。
(2) 1999年以来のある期間に対人地雷を使用した国:
   エリトリア(2001年の加入前に使用)
   エチオピア(1997年の署名後、2004年の批准前に使用)
   グルジア(非締約国)
   イラク (2007年の加入前に使用)
   キルギス(非締約国)
   ネパール(非締約国)
   スリランカ(非締約国)
   ウズベキスタン(非締約国)
(3) 対人地雷が最も大量に使用されたのは、2001?2002年のインド・パキスタン国境でした。
(4) 2009年以降に対人地雷を使用したのは、イスラエル、リビア、ミャンマー、ロシア、シリアの5ヵ国のみです。

以前のLMモニター報告書は、オタワ条約が1999年3月に発効して以来、締約国政府軍による対人地雷の使用はなかったと書いていました。しかし、イエメン政府軍が2011年に対人地雷を使用したという報道が、また、カンボジア、スーダン、トルコが対人地雷を使用したという報告もあり、更に調べる必要があります。

非政府武装勢力(NSAG)による対人地雷の使用は『LMモニター報告書』によると、1999年以来、27ヵ国 で確認されています。
 
以下の国々のNSAGは、今後、対人地雷を使用しないと、ジュネーブの市民団体Geneva Callに約束をしました。アフガニスタン、ブルンディ、インド、イラン、イラク、ミャンマー、フィリピン、ソマリア、スーダン、トルコ、西サハラのNSAGです。

他のいくつかのNSAGが対人地雷、あるいは、犠牲者の動作によって爆発する手製仕掛け爆弾(IED)を使用したとの報告があったとして、『LMモニター報告書2013年版』は8ヵ国1地域を挙げています。それらは、アフガニスタン、コロンビア、ミャンマー、パキスタン、シリア、タイ、チュニジア、イエメン、ナゴルノ・カラバフのNSAGです。
     
3. 対人地雷の保有と、保有対人地雷の廃棄(条約第4条)
1999年3月1日にオタワ条約が発効した時点では、124の国々が対人地雷を保有していました。
 
(1)1999年以来、日本を含む87の締約国が保有対人地雷の廃棄を完了し、4,700万個以上が廃棄されました。
(2)今の予定では、締約国7ヵ国7で 約1,100万個が廃棄される予定です。
   これら7締約国のうち、ベラルーシ、ギリシャ、ウクライナは、条約発効後4年以内に廃棄することという条約第4条に違反しています。
(3)非締約国も1999年以来、保有地雷の幾つかを廃棄しその数を発表しました。中国(200万個以上)、イスラエル、ロシア(約1,000万個)、米国、ベトナムです。非締約国36ヵ国のうち、32ヵ国が対人地雷を保有していると思われます。

4. 対人地雷の製造と移譲(条約第1条)
 『LMモニター報告書1999年版』によると、過去に50ヵ国以上が対人地雷を製造していました。しかし、その多くの国々が1970年代から90年代の間に製造を中止し、オタワ条約に加盟しました。非締約国のエジプト、イスラエル、ネパールの3ヵ国を含む39ヵ国が対人地雷の製造をやめています。
 
(1) LMモニターが現在対人地雷の製造国としているのは、中国、キューバ、インド、イラン、ミャンマー、北朝鮮、パキスタン、ロシア、シンガポール、韓国、米国、ベトナムの12ヵ国です。
(2) これらの国々のほとんどは実際には対人地雷を製造していません。しかし、製造する権利を留保しています。実際に製造を続けているのは、少なくとも4ヵ国(インド、ミャンマー、パキスタン、韓国)と思われます。

1999年にLMモニターは、過去に少なくとも34ヵ国が対人地雷を輸出していたと報告しました。しかし、1990年代の半ばから事実上の輸出は禁止されていたと見ていますが、僅かな密輸と、未確認、あるいは実証できない貿易は続いていたと疑われています。

(3) アフガニスタンのある地雷除去団体は2002年?2004年に北部同盟前線地域で1999年、2000年製造と刻印されたイラン製の対人地雷を数百個掘り出し、破壊したと報告しました。
(4) 非締約国の多く(中国、インド、イスラエル、カザフスタン、パキスタン、ロシア、シンガポール、韓国、米国)が輸出の一時禁止を行い、その期間を延長しています。加えて、キューバ、エジプト、ベトナムの代表も、正式な輸出禁止措置はとっていないが、対人地雷の輸出を行っていないと報告しました。

5. 訓練・研究用の地雷の保有(条約第3条)
訓練・研究用の対人地雷を75の締約国が保有していると報告しました。42ヵ国が1,000個以上を保有し、フィンランド、バングラデシュ、トルコの3ヵ国は12,000個以上を保有しています。日本の保有は15,000個でしたが、2013年末は1,930個になっています。
 
(1) これらの国々の要求を再検討した結果、ブータン、スロベニア、南アフリカは保有数を1,000以下に減らしました。
(2) 過去に対人地雷を保有していた30ヵ国を含む84の締約国が、訓練・研究用の対人地雷を保有しないと宣言しました。
(3) 締約国の11ヵ国8 は、保有を許された対人地雷の何個が訓練・研究用に使用されたかを、オタワ条約が発効した1999年3月1日以来、報告していません。

6. 透明性報告書(7条報告書)の提出状況(条約第7条)
オタワ条約の毎年の実施状況を報告する透明性報告書の第1回はほとんどすべての締約国が(条約の発効後180日以内に)提出しています。
 
(1) 赤道ギニア(提出期限が1999年)、ツバル(提出期限が2012年)の2ヵ国は透明性報告書を一度も提出したことがありません。
(2) 毎年の提出率は年々低下し、最近の提出率は50?60%です(第2回以降の透明性報告書は、毎年4月30日までに国連事務総長に出すことになっています)。
(3) モロッコは2012年に透明性報告書を自主的に提出した唯一の非締約国でした。ポーラン
   ドは2012年12月27日までは批准国でなく署名国でしたが、批准前に自発的に10回の透明性報告書を提出しました。

その前の期間に、非締約国のアゼルバイジャン(2008年、2009年)、ラオス(2010年)、モンゴル(2007年)、パレスチナ(2011年)、スリランカ(2005年)が自発的に透明性報告書を提出しました。

                       ICBL 2014年6月
                       訳:2014年11月  JCBL 北川泰弘